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2026年医療法改正で、クリニック開業はどう変わる?|外来医師過多区域・事前届出制度をわかりやすく解説

7月29日
読了時間: 6分

はじめに


「医師免許があれば、どこでも自由に開業できる」

——これまで長らく当たり前とされてきたこの前提が、2026年、大きな転換点を迎えています。


2025年12月に成立した改正医療法により、医師偏在対策の一環として、都市部を中心にクリニックの新規開業に一定の制約が課される仕組みが導入されました。

2026年4月から段階的に施行が始まっており、今まさに開業を検討されている先生方にとって、避けて通れないテーマです。


本コラムでは、今回の改正で新設された「外来医師過多区域」と「事前届出制度」を中心に、開業規制の全体像を整理します。



1. なぜ今、開業規制が導入されたのか


今回の改正の背景にあるのは、医師の地域偏在という長年の課題です。

都市部ではクリニックの開設が増加を続ける一方、地方では医師不足が深刻化しており、政府は「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を取りまとめ、これを踏まえて医療法の改正に踏み切りました。


これまでも「外来医師多数区域」という枠組みのもとで、地域で不足する外来医療機能を担うよう協議や要請が行われていましたが、法的な届出義務や保険医療機関の指定に影響する仕組みはありませんでした。

今回の改正では、この中でも特に医師が集中しているエリアを対象に、より踏み込んだ制度が新設されています。



2. 「外来医師過多区域」とは何か


改正医療法(2026年4月1日施行)では、厚生労働省が示す基準を満たす二次医療圏を「外来医師過多区域」として指定できる仕組みが設けられました。


単純な医師の人数ではなく、人口構成や受療率、医師の年齢・労働時間なども加味した複合指標に基づいて判定される点がポイントです。

また「診療所の密度」も条件に含まれているため、人口が多い地域でも、診療所があまり密集していなければ対象外となり得ます。


候補となる地域としては、大都市圏の二次医療圏が挙げられていますが、実際にどの区域が指定されるかは、今後各都道府県の判断に委ねられています。

開業を検討しているエリアが対象になり得るかどうかは、早めに自治体へ確認しておくことをおすすめします。



3. 新設された「事前届出制度」の中身


外来医師過多区域で無床診療所を新規開設しようとする場合、開設の6か月前までに、都道府県知事への事前届出が必要になります。


届出にあたっては、地域で不足している医療機能のうち、自院がどの機能を担うかを示す必要があります。想定されている機能としては、次のようなものが挙げられています。


  • 夜間・休日等における対応

  • 在宅医療への対応

  • その他、地域の外来医療提供体制の確保に関するガイドラインで示される機能


つまり、単に「開業したい場所を確保する」だけでなく、地域医療にどう貢献するかを、事前に行政と共有することが求められる制度です。

物件を確定させる前の、事業計画づくりの段階から、この届出を見据えた準備が必要になります。



4. 届出・要請に応じなかった場合はどうなるか


今回の制度は、開業そのものを一律に禁止するものではありません。

しかし、行政からの要請に応じずに開業した場合には、次のようなディスインセンティブ(不利益)が設けられています。


  • 保険医療機関としての指定期間が、通常6年から3年以内へ短縮される

  • 2026年10月以降に開設した診療所については、行政からの勧告を受けた事実が医療情報ネット上で公表される


保険診療を前提とするクリニックにとって、指定期間の短縮や情報公表は経営上の影響が小さくありません。

届出をしない場合には30万円以下の罰金の対象となるほか、届出後の協議や行政からの要請に応じない場合には、保険医療機関の指定期間の短縮などの措置が講じられる仕組みとなっています。



5. あわせて厳格化される「管理者(院長)要件」


今回の改正では、開業規制と並行して、保険医療機関の管理者(院長)となるための要件も厳格化されています。

2026年4月以降、原則として3年以上の保険診療等の経験が必要とされ、次のように整理されています。


  • 臨床研修を終えていない場合:臨床研修修了後、病院(歯科医師は病院又は診療所)において3年以上の従事経験が必要

  • 臨床研修を終えている場合:臨床研修期間を含め、病院又は診療所において3年以上の従事経験が必要


臨床研修を終えていない医師については、病院での経験が必要となります。

これは、名義貸しのような形式的な分院展開を防ぎ、管理者としての質を担保する狙いがあるとされています。

開業のタイミングだけでなく、それまでのキャリア形成の段階から意識しておくべき要件といえます。



6. 開業を検討する医師が、今から準備しておくべきこと


制度の詳細は、2026年4月の施行に向けて省令・通知が順次発出されている段階であり、今後も運用の詳細が明らかになっていくと見込まれます。

現時点で意識しておきたいポイントを整理すると、次のとおりです。


  • 開業を希望するエリアが「外来医師過多区域」に該当する可能性があるか、早い段階で自治体に確認する

  • 該当する場合は、6か月前という届出期限から逆算して、事業計画・物件選定のスケジュールを組み直す

  • 地域で不足している医療機能(夜間・休日対応、在宅医療など)を、自院の診療体制にどう組み込めるかを検討する

  • 管理者要件を満たすキャリア(病院での勤務経験)を積んでいるか、早めに確認する



おわりに


今回の改正は、「開業を止める」ための制度ではなく、地域住民が必要とする医療を確保するための仕組みとして位置づけられています。

とはいえ、これまでのように「良い物件が見つかったら、すぐに開業準備を進める」という進め方が通用しにくくなっているのも事実です。


制度は今後も運用が固まっていく段階にあるため、開業を検討されている先生は、早めに専門家へご相談いただくことをおすすめします。


当事務所でも、開業予定地の該当状況の確認から、事前届出の準備まで、開業準備全体のサポートを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。


本コラムの内容は、2026年7月時点で公表されている情報に基づいて作成しています。

制度の運用や対象区域の指定状況は今後更新される可能性がありますので、実際の開業準備にあたっては、最新の情報をご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。



行政書士岡瑛美事務所 岡 瑛美

医療分野に特化した行政書士として、開設から運営まで一貫してサポートします。


「まだ検討段階」という方のご相談も歓迎しています。


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