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クリニックの増床・改装時に必要な手続き――変更届・許可申請の落とし穴


はじめに


開院後しばらくして、「患者数が増えて手狭になった」「診療内容を拡充したい」「設備を新しくしたい」といった理由から、クリニックの増床・改装を検討する先生方は少なくありません。


しかし増床・改装は単なるリフォームではなく、内容によっては保健所や地方厚生局への届出・許可申請が必要になります。工事が完了してから「届出が必要だった」と気づいても、場合によっては是正を求められることがあります。


この記事では、クリニックの増床・改装時に必要な手続きを、変更の内容別に整理して解説します。



増床・改装時の手続きが必要かどうかの基本的な考え方


増床・改装時に届出・申請が必要かどうかは、主に以下の観点で判断されます。


構造設備の変更を伴うかどうか

診察室の面積変更・診療室の追加・待合室の拡張など、構造設備に関わる変更は保健所への届出が必要です。


診療科目・診療内容の変更を伴うかどうか

新たな診療科目の追加や、X線装置・新たな医療機器の導入は、別途届出が必要になる場合があります。


入院ベッド数の変更を伴うかどうか

有床診療所がベッド数を増減させる場合は、保健所への届出が必要です。


医療法人の場合は定款変更が必要かどうか

医療法人が運営するクリニックの場合、変更内容によっては定款変更認可が必要になる場合があります。



保健所への届出が必要な変更


以下のような変更を行う場合は、保健所への変更届が必要です。

変更内容

届出の種類

届出期限の目安

診療室・待合室などの構造設備の変更

診療所変更届

変更後10日以内

診療科目の追加・変更

診療所変更届

変更後10日以内

床面積の変更(増床・縮小)

診療所変更届

変更後10日以内

入院ベッド数の変更(有床診療所)

診療所変更届

変更後10日以内

管理者(院長)の変更

診療所変更届

変更後10日以内

診療所名称の変更

診療所変更届

変更後10日以内

提出書類の例

  • 診療所変更届(所定の様式)

  • 変更後の平面図(各室の用途・面積が明記されたもの)

  • 変更内容がわかる書類


※都道府県・保健所によって必要書類が異なります。事前に管轄の保健所に確認してください。



地方厚生局への届出が必要な変更


保険医療機関として届出が必要な変更は以下の通りです。

変更内容

届出先

診療時間・休診日の変更

地方厚生局

診療科目の変更

地方厚生局

病床数の変更

地方厚生局

施設基準の変更・追加・辞退

地方厚生局

医師・スタッフの変更

地方厚生局

特に施設基準の届出は、増床・改装を機に新たな加算の算定を始める場合に忘れられがちです。

届出なしに加算を算定していた場合、診療報酬の返還を求められるリスクがあります。



X線装置を新たに設置・変更する場合


X線装置(レントゲン・CT等)を新たに設置または更新する場合は、以下の手続きが必要です。


新規設置の場合

  • 備え付けた日から10日以内に保健所へ「エックス線装置備え付け届」を提出

  • X線室の遮蔽設計が放射線障害防止の基準を満たしているか確認


装置を更新・廃止する場合

  • 装置の廃止届の提出が必要な場合があります(管轄保健所に確認)


X線室の遮蔽工事は、装置の種類・設置場所によって必要な遮蔽量が異なります。

改装時にX線室の位置を変更する場合は、放射線の専門業者と連携した設計が必要です。



有床診療所の増床に必要な手続き


無床診療所が入院ベッドを新たに設ける場合、または有床診療所がベッド数を増やす場合は、通常の変更届に加えて追加の手続きが必要です。


病床規制について

病床(入院ベッド)の設置は、医療法に基づく病床規制の対象となります。

地域の医療計画によっては、病床を増やすことが認められない場合があります。

まず都道府県・保健所に相談し、増床が可能かどうかを確認することが最初のステップです。


構造設備基準の充足

有床診療所には、無床診療所よりも厳しい構造設備基準が適用されます。

病室の面積・廊下幅・浴室・食堂などの基準を満たす必要があります。



医療法人が改装・増床する場合の追加手続き


医療法人が運営するクリニックの場合、変更内容によっては以下の追加手続きが必要です。


都道府県への診療所変更許可申請

医療法人が診療所の構造設備を大きく変更する場合、都道府県知事への変更許可申請が必要になることがあります。個人診療所の「届出」とは異なり、「許可申請」となるため、認可が下りるまでに時間がかかります。


定款変更認可

診療所の床面積・病床数など定款に記載された事項が変わる場合は、定款変更の認可申請が必要です。

定款変更は都道府県知事の認可が必要で、認可まで数ヶ月かかることがあります。


法務局への登記変更

定款変更認可後、必要に応じて法務局での登記変更を行います。



建築基準法・消防法上の手続き


増床・改装の規模によっては、行政手続き以外にも建築基準法・消防法上の手続きが必要になる場合があります。


建築確認申請

増築を伴う場合や、一定規模以上の大規模修繕・用途変更を伴う場合は、建築確認申請が必要です。

建築士と連携して対応しましょう。


消防設備の変更

間取りの変更・面積の拡大に伴い、消防設備(火災報知器・誘導灯・消火器等)の追加・変更が必要になる場合があります。

工事着工前に消防署に相談することをおすすめします。



増床・改装前に必ずやること


増床・改装を計画する際は、工事着工前に以下を必ず行いましょう。


① 保健所への事前相談

変更後の平面図を持参し、構造設備基準を満たしているか・届出の内容はどうなるかを事前に確認します。工事完了後に問題が発覚すると、やり直し工事が必要になる場合があります。


② 地方厚生局への確認

施設基準の変更・新たな加算の算定を検討している場合は、要件を満たしているかを事前に確認します。


③ 医療法人の場合は都道府県への事前相談

定款変更が必要かどうか・許可申請が必要かどうかを早めに確認し、スケジュールに余裕を持たせましょう。



よくある失敗例


失敗例①:届出なしに改装工事を進めてしまった

「内装を少し変えるだけだから届出は不要」と判断して工事を進めたところ、保健所から変更届の提出を求められた。

→ 構造設備に関わる変更は、軽微なものでも届出が必要な場合があります。迷ったら保健所に相談しましょう。


失敗例②:施設基準の届出を忘れて加算を算定してしまった

改装を機に新たな加算の算定を始めたが、地方厚生局への施設基準の届出を失念していた。後日の監査で発覚し、診療報酬の返還を求められた。

→ 新たな加算を算定する前に、必ず施設基準の届出を完了させましょう。


失敗例③:医療法人の定款変更を忘れていた

増床工事を完了させたが、定款変更の手続きを失念していた。後から認可申請を行う羽目になり、手続きが煩雑になった。

→ 医療法人の場合は、工事着工前に定款変更が必要かどうかを必ず確認しましょう。



まとめ


クリニックの増床・改装は、変更の内容によって保健所・地方厚生局・都道府県・法務局など複数の窓口への手続きが必要になります。

特に医療法人の場合は定款変更認可が絡むケースがあり、早めの準備が不可欠です。

「工事の計画が固まってから手続きを考えよう」ではなく、計画段階から手続きの確認を始めることが、スムーズな増床・改装への近道です。


「増床・改装を検討しているが何から始めればよいかわからない」「必要な届出を整理してほしい」という先生方は、お気軽にご相談ください。

計画段階からの事前確認・届出書類の作成まで、トータルでサポートいたします。



制度は改正されることがあります。最新情報については、当事務所にご確認ください。


行政書士岡瑛美事務所 岡 瑛美

医療分野に特化した行政書士として、開設から運営まで一貫してサポートします。

「まだ検討段階」という方のご相談も歓迎しています。











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