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クリニック開業までにかかる費用の全体像――資金計画で失敗しないために


はじめに


クリニックの開業を検討するとき、「どのくらいの資金が必要なのか」は最初に気になるポイントのひとつです。

しかし開業費用は診療科・立地・規模・内装のこだわりによって大きく異なり、「いくらあれば大丈夫」と一概には言えません。


それ以上に問題なのが、見落としがちな費用の存在です。

物件取得費や内装工事費は意識しやすい一方、行政手続きにかかる費用・開業後の運転資金・予備費を甘く見積もった結果、開院直後に資金繰りが苦しくなるケースが実際に起こっています。


この記事では、クリニック開業にかかる費用の全体像を項目別に整理します。

資金計画を立てる際の参考にしていただければ幸いです。



開業費用の全体像


開業にかかる費用は、大きく以下の5つに分類できます。


  1. 物件取得・初期費用

  2. 内装工事費

  3. 医療機器・設備費

  4. 開業準備費用

  5. 運転資金


それぞれ順番に見ていきましょう。



① 物件取得・初期費用


テナント(賃貸)の場合

費用項目

目安

敷金・保証金

家賃の3〜12ヶ月分

礼金

家賃の0〜2ヶ月分

仲介手数料

家賃の1ヶ月分程度

前払い家賃

1〜2ヶ月分

医療テナントは一般のオフィスよりも保証金が高めに設定されているケースが多く、数百万円になることもあります。


自己所有(購入・新築)の場合

土地・建物の購入費または建築費が必要です。規模や立地によって数千万円〜数億円と幅が大きくなります。

住宅ローンとは異なる「事業用ローン」での融資となるため、早めに金融機関に相談しましょう。



② 内装工事費


内装工事費は開業費用の中で最も大きな割合を占める項目のひとつです。

診療科の目安

工事費の目安

内科・小児科・皮膚科など

1,000万〜3,000万円程度

歯科

1,500万〜4,000万円程度

眼科・整形外科など

2,000万〜5,000万円程度

※物件の状態・広さ・内装のグレードによって大きく異なります。


内装工事で見落としがちな費用

  • 医療ガス配管工事(酸素・吸引など)

  • X線室の遮蔽工事

  • 電気容量の増設工事

  • 空調・換気設備の新設

  • バリアフリー対応工事

  • 看板・サイン工事


これらは見積もりに含まれていないケースもあるため、工事業者に事前に確認しましょう。



③ 医療機器・設備費


医療機器は診療科によって必要なものが大きく異なります。


主な医療機器の費用目安

機器

費用目安

電子カルテシステム

100万〜500万円程度

X線装置(デジタル)

500万〜1,500万円程度

超音波診断装置

200万〜800万円程度

心電図・生体モニター

50万〜200万円程度

歯科ユニット(1台)

200万〜500万円程度

眼科検査機器一式

500万〜2,000万円程度

医療機器はリースや割賦払いを活用することで、初期の資金負担を抑えることができます。

購入・リース・割賦のどれが有利かは、資金状況・税務上の扱いを踏まえて税理士と相談のうえ決めましょう。



④ 開業準備費用


物件・工事・機器以外にも、開業準備にはさまざまな費用が発生します。


行政手続き関連

  • 各種申請・届出の手数料(比較的少額ですが、書類作成の手間がかかります)

  • 行政書士・司法書士への依頼費用


システム・備品関連

  • レセコン(レセプトコンピュータ)導入費用

  • 予約システム・会計システムの導入費用

  • 電話・インターネット回線の工事費

  • 院内備品(デスク・椅子・待合室の家具など)

  • ユニフォーム・消耗品の初期購入費


広告・集患関連

  • ホームページ制作費

  • 看板・チラシなどの広告費

  • 内覧会の開催費用


その他

  • 医師賠償責任保険の保険料

  • 開業コンサルタントへの依頼費用(利用する場合)



⑤ 運転資金


開業直後は患者数が少なく、診療報酬の入金も遅れるため、しばらくの間は持ち出しで運営することになります。この期間を乗り越えるための運転資金の確保が、開業後の経営安定に直結します。


診療報酬の入金サイクルに注意

保険診療の診療報酬は、診療月から2ヶ月後に入金されます。

たとえば4月に診療した分の報酬が入金されるのは6月です。

開業直後はこの2ヶ月間、収入がない状態で家賃・人件費・医療材料費などを支払い続ける必要があります。


運転資金の目安

一般的に、月間の固定費(家賃・人件費・リース料・材料費など)の3〜6ヶ月分を運転資金として確保しておくことが推奨されています。



資金調達の主な方法


開業資金の調達には、以下の方法が一般的です。


日本政策金融公庫の融資

医療・福祉分野の開業に積極的な融資実績があります。

自己資金が少なくても融資を受けられるケースがあり、開業医の資金調達先として広く活用されています。


民間金融機関の融資

地方銀行・メガバンク・信用金庫などからの融資です。

日本政策金融公庫と併用するケースも多くあります。


メーカー・ディーラーのリース・割賦

医療機器をリースや割賦で導入することで、初期の資金負担を抑えることができます。


自己資金

自己資金の割合が高いほど融資審査で有利になります。

一般的に開業費用の20〜30%程度の自己資金があることが望ましいとされています。



開業費用の総額目安


診療科・規模・立地によって大きく異なりますが、一般的な外来クリニックの開業費用の総額は以下の通りです。

規模・形態

開業費用の目安

小規模クリニック(テナント・内科系)

3,000万〜6,000万円程度

標準的なクリニック(テナント・内科系)

5,000万〜1億円程度

歯科クリニック

4,000万〜8,000万円程度

眼科・整形外科など機器が多い診療科

7,000万〜1億5,000万円程度

※あくまで目安です。実際の費用は個別の状況によって大きく異なります。



資金計画で失敗しないための3つのポイント


① 予備費を必ず確保する

工事費の超過・想定外の設備追加など、開業準備では予定外の出費が発生することが少なくありません。総費用の10〜15%程度を予備費として確保しておきましょう。


② 運転資金を軽視しない

「設備にお金をかけすぎて運転資金が足りなかった」というケースは非常に多いです。

診療報酬の入金サイクルを踏まえ、最低でも3ヶ月分の固定費を手元に残しておきましょう。


③ 早めに専門家に相談する

資金計画は税理士・ファイナンシャルプランナー・金融機関に早めに相談することで、融資条件の改善・節税対策・無駄なコストの削減につながります。

「まだ検討段階」でも相談に来ていただくことで、開業準備がスムーズになります。



まとめ


クリニック開業にかかる費用は、物件・工事・医療機器・運転資金を合わせると数千万円〜1億円以上になることも珍しくありません。費用の全体像を早めに把握し、余裕を持った資金計画を立てることが、開業後の経営安定への第一歩です。


「開業費用のざっくりとした見通しを立てたい」「資金調達の準備を始めたい」という先生方は、お気軽にご相談ください。

開業準備の初期段階から、必要な専門家のご紹介も含めてサポートいたします。



制度は改正されることがあります。最新情報については、当事務所にご確認ください。


行政書士岡瑛美事務所 岡 瑛美

医療分野に特化した行政書士として、開設から運営まで一貫してサポートします。

「まだ検討段階」という方のご相談も歓迎しています。









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