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診療所の構造設備基準と内装工事の注意点――着工前に確認すべきこと


はじめに


診療所の開設にあたって、物件選びや内装工事は開業準備の中でも特に時間とコストがかかる部分です。

しかし「気に入った物件で工事を進めたら、完成後に保健所から指摘を受けてやり直しになった」というケースが実際に起こっています。


診療所として使用するためには、医療法および関連省令が定める構造設備基準を満たす必要があります。この基準を理解したうえで物件を選び、着工前に保健所へ事前相談を行うことが、開院の遅延や余計なコストを防ぐための最大のポイントです。


この記事では、診療所に求められる構造設備基準の概要と、内装工事を進めるうえで押さえておきたい注意点を解説します。



診療所の構造設備基準とは?


医療法第23条および医療法施行規則に基づき、診療所には一定の構造設備基準が定められています。

基準を満たさない状態では、保健所から開設届が受理されない、あるいは立入検査で是正を求められる場合があります。


主な基準の概要


診察室

  • 面積は6.6㎡以上

  • 診察に支障のない広さ・構造であること


待合室

  • 診療を待つ患者が使用できる専用スペースを設けること

  • 面積の明確な規定はありませんが、患者数に応じた適切な広さが必要です


換気・採光・照明・防湿

  • 適切な換気設備があること

  • 自然採光または人工照明により、診療に支障のない明るさが確保されていること

  • 湿気による衛生上の問題が生じない構造であること


汚物処理

  • 汚物を衛生的に処理できる設備を設けること


手洗い設備

  • 診察室内または隣接した場所に流水式の手洗い設備があること


トイレ

  • 患者用のトイレを設けること(建物共用トイレでも可の場合あり。保健所に要確認)



入院施設を設ける場合の追加基準


入院ベッドを設ける診療所(有床診療所)の場合は、上記に加えてさらに厳しい基準が適用されます。

  • 病室の面積:1床あたり6.4㎡以上

  • 廊下幅:一定以上の幅が必要(片側居室・両側居室で異なります)

  • 浴室・洗面設備の設置

  • 談話室・食堂などの設置(規模による)


有床診療所を検討している場合は、早い段階で保健所に相談することを強くおすすめします。



X線装置を設置する場合


X線装置(レントゲン)を設置する場合は、構造設備基準とは別に、放射線障害防止のための基準を満たす必要があります。

具体的には、X線室の壁・床・天井に一定の遮蔽能力(鉛当量)が求められます。

設置場所が1階か上階か、隣室の用途が何かによっても必要な遮蔽量が変わるため、放射線の専門業者・医療機器メーカーと連携したうえで設計を行う必要があります。


また、X線装置を備え付けた日から10日以内に保健所へ「エックス線装置備え付け届」を提出する義務があります。



内装工事で押さえておきたい注意点


① 必ず着工前に保健所へ事前相談を

構造設備基準を満たしているかどうかは、工事完了後ではなく、平面図の段階で確認するのが鉄則です。

工事が完成してから問題が発覚した場合、壁の撤去・移動・設備の追加といったやり直し工事が必要になり、開院時期の大幅な遅延とコストの増大につながります。

平面図が完成した段階で保健所の窓口に持参し、基準を満たしているか確認を取ってから着工しましょう。


② 物件の選定段階から基準を意識する

既存のテナントやビルの一室を診療所として使用する場合、構造上の制約から基準を満たすことが難しいケースがあります。


特に以下の点は物件選定の段階で確認しておきましょう。


  • 診察室として使用する部屋が6.6㎡以上確保できるか

  • 待合室を独立したスペースとして設けられるか

  • 換気・採光が確保できる構造か

  • X線室を設ける場合、遮蔽工事が可能な構造か(上階・隣室への影響)

  • 水回り(手洗い・トイレ)の増設が可能か


③ 用途変更の確認

もともと居住用・事務所用として使われていた物件を診療所に転用する場合、建築基準法上の用途変更が必要になる場合があります。

延床面積200㎡を超える場合は確認申請が必要です。建築士や施工業者と連携して確認しましょう。


④ 工事業者への周知

診療所の内装工事に不慣れな業者に依頼した場合、医療法上の基準を知らずに施工が進んでしまうことがあります。

業者選定の際は医療施設の施工実績を確認し、保健所への事前相談内容を業者とも共有したうえで工事を進めましょう。



保健所の立入検査について


開設届を提出すると、保健所による立入検査が行われます。

検査では、実際の施設が届出内容・構造設備基準を満たしているかが確認されます。


指摘事項があった場合は是正が求められますが、軽微な指摘であれば書面での報告で対応できる場合もあります。

一方、構造上の問題が発覚した場合は工事のやり直しが必要になることもあるため、事前相談の段階でしっかりと確認しておくことが大切です。



まとめ:構造設備は「事前確認」が全て


診療所の構造設備基準で失敗しないためのポイントは、一言でいえば「着工前に保健所へ相談する」に尽きます。


  • 平面図の段階で保健所に確認を取ってから工事を進める

  • 物件選定の時点から基準を意識して物件を絞り込む

  • X線装置を設置する場合は専門業者と連携した設計を行う

  • 用途変更が必要な物件は建築士と連携する


「物件は決まったが、診療所として使えるか不安」「保健所への事前相談に同席してほしい」という先生方は、お気軽にご相談ください。開設前の準備段階からサポートいたします。


制度は改正されることがあります。最新情報については、当事務所にご確認ください。


行政書士岡瑛美事務所 岡 瑛美

医療分野に特化した行政書士として、開設から運営まで一貫してサポートします。

「まだ検討段階」という方のご相談も歓迎しています。

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