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診療所の移転手続きはどうすればいい?――届出先・スケジュール・注意点を解説


はじめに


「患者数が増えて手狭になった」「ビルの建て替えで退去が必要になった」「より利便性の高い場所に移りたい」――診療所の移転にはさまざまな理由があります。

移転は単なる引っ越しではなく、行政上は現在の診療所の廃止と新たな診療所の開設として扱われます。

そのため、開設時と同様の手続きが必要になるほか、保険医療機関の指定の切り替えや患者への周知など、移転特有の対応も求められます。


この記事では、診療所移転に必要な手続きの全体像と、スケジュール管理のポイントを解説します。



移転は「廃止+新規開設」として扱われる


まず大前提として、診療所の移転は行政上、以下の2つの手続きがセットになります。

  • 現在の診療所の廃止届(保健所)

  • 新しい診療所の開設届(保健所)


「移転届」という一本の手続きで完結するわけではありません。

また、保険医療機関の指定についても、現在の指定をそのまま引き継ぐことはできず、新所在地で新たに指定申請を行う必要があります。

この点を知らずに準備を進めると、移転後に保険診療ができない空白期間が生じるリスクがあります。



移転に必要な手続き一覧


保健所への手続き

手続き

内容

期限

新診療所の開設届

新所在地を管轄する保健所へ提出

開設後10日以内

旧診療所の廃止届

旧所在地を管轄する保健所へ提出

廃止後10日以内

新旧の診療所が異なる保健所の管轄にまたがる場合は、それぞれの保健所への手続きが必要です。



地方厚生局への手続き

手続き

内容

新診療所の保険医療機関指定申請

新所在地で新たに指定申請

旧診療所の保険医療機関指定廃止届

旧所在地の指定を廃止

保険医療機関の指定は毎月1日付けのため、移転日と指定日のタイミングを合わせるスケジュール管理が重要です。



その他の関連手続き

手続き

届出先

X線装置備え付け届(設置する場合)

新所在地を管轄する保健所

施設基準の届出(加算を算定する場合)

地方厚生局

法人登記の変更(医療法人の場合)

法務局

定款変更認可(医療法人の場合)

都道府県



医療法人が移転する場合の追加手続き

個人診療所の移転に比べ、医療法人が運営する診療所の移転は手続きが増えます。


定款変更の認可

医療法人の定款には診療所の所在地が記載されているため、移転に伴い定款変更が必要です。

定款変更は都道府県知事の認可が必要で、認可までに数ヶ月かかる場合があります。


法務局への登記変更

定款変更認可後、法務局で主たる事務所の所在地変更登記を行います。


都道府県への診療所開設許可申請

医療法人が診療所を開設する場合、個人の「開設届」ではなく都道府県知事への「開設許可申請」が必要です。


これらの手続きは順序が決まっており、並行して進められないものもあるため、移転の1年前を目安に準備を開始することをおすすめします。



スケジュール管理のポイント


移転手続きで最も重要なのは、保険診療の空白期間を作らないことです。

保険医療機関の指定は毎月1日付けのため、理想的には移転日=新診療所の指定日(月の1日)となるよう逆算してスケジュールを組みます。


目安となるスケジュールは以下の通りです。


移転6〜12ヶ月前

  • 新物件の選定・契約

  • 医療法人の場合は定款変更認可申請の準備開始

  • 保健所への事前相談(新物件の構造設備基準の確認)


移転3〜6ヶ月前

  • 内装工事の設計・着工

  • 医療法人の場合は定款変更認可申請の提出


移転1〜2ヶ月前

  • 新診療所の開設届の提出(工事完了後)

  • 地方厚生局への保険医療機関指定申請(締切に注意)

  • 患者への移転案内の送付・院内掲示


移転当日・移転後

  • 旧診療所の廃止届の提出(廃止後10日以内)

  • 旧診療所の保険医療機関指定廃止届の提出

  • X線装置備え付け届の提出(備え付け後10日以内)



患者への周知と引き継ぎ


手続き面だけでなく、患者への周知も移転準備の重要な要素です。


院内掲示・お知らせ

移転が決まった段階で、院内に移転のお知らせを掲示しましょう。

できれば移転の2〜3ヶ月前から周知を始めることをおすすめします。


ウェブサイト・SNSの更新

住所・地図・電話番号などを移転日に合わせて更新します。

Googleビジネスプロフィールの住所変更も忘れずに行いましょう。


紹介先医療機関・調剤薬局への連絡

連携している医療機関や調剤薬局には、移転前に個別に連絡しておきましょう。


処方箋の様式変更

処方箋には診療所の住所が記載されているため、移転後は新住所の処方箋に切り替える必要があります。



よくある失敗例


失敗例①:定款変更認可の期間を甘く見ていた

医療法人が移転する場合、定款変更認可に予想以上の時間がかかり、希望の移転日に間に合わなかった。

→ 医療法人の移転は最低でも1年前から準備を始めましょう。


失敗例②:保険医療機関の指定申請を忘れていた

移転準備に追われる中で、新診療所の保険医療機関指定申請を失念。移転後しばらく保険診療ができない状態になった。

→ 指定申請の締切(移転希望月の前月20日前後)を必ずカレンダーに入れておきましょう。


失敗例③:新物件が構造設備基準を満たしていなかった

工事完了後に保健所の立入検査で指摘を受け、追加工事が必要になった。

→ 物件選定の段階から保健所に事前相談を行いましょう。



まとめ


診療所の移転は「引っ越し」ではなく「廃止+新規開設」です。

手続きの種類が多く、特に医療法人の場合は定款変更認可が加わるため、早めの準備が不可欠です。

移転準備の全体スケジュールを整理したい、手続きを任せたいという先生方は、お気軽にご相談ください。

移転に伴う各種届出・申請をトータルでサポートいたします。



制度は改正されることがあります。最新情報については、当事務所にご確認ください。


行政書士岡瑛美事務所 岡 瑛美

医療分野に特化した行政書士として、開設から運営まで一貫してサポートします。

「まだ検討段階」という方のご相談も歓迎しています。









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